リアリティセラピーの2つのタイプのカウンセリング

選択理論が構築されてきた過程を概観してみると、次の①から④のようなものになると思われる。

 

①人の行動がどのように起こされるのかを、「脳の働きと行動のメカニズム」という形で理論化した。人間には5つの基本的欲求があり、人は基本的欲求を充たすために、内的に動機づけられて行動する。

 

②人の行動を、行為、思考、感情、生理反応の4つの要素からなる全行動をして捉えた。そして、この4つの要素のうち、人は、行為と思考は意識して変えることができるが、感情と生理反応については、思い通りに変えることは困難であること、行為と思考を変えることにより感情や生理反応も間接的に変えることができること、を明らかにし、人が行動をセルフコントロールできる方法を確立した。

 

また、これらの選択理論に基づくカウンセリングの方法として、リアリティセラピーを生み出した。

 

そして、カウンセリングがうまくいくためには、カウンセラーとクライアントの人間関係が構築されることが重要であること、そのためにカウンセラーはカウンセリングの環境づくりに努力すべきこと、が求められる。

 

③さらに、セルフコントロールやリアリティセラピーのモデルとして、ウォボルディングによって「WDEPモデル」がつくられている。

 

WDEPモデルは、セルフコントロールする本人や、カウンセリングのクライアントから、「願望・思考・見方等の見える化→現在の行動・状況の把握→自己評価の促し→プランづくり」という一連のプロセスのもとで、本人の自己評価による気づきを重視しつつ、「思考、知覚、気づき、洞察」と「改善のための具体的な行為、思考」を引き出すための効果的なモデルである。

 

④その後、グラッサーは、人の長期にわたる心理的な問題は、多くの場合、人間関係の問題である、クライアントの長期にわたる不幸や、身体的、心理的症状の背後に、その人にとって大切な人間関係の欠如(断絶)がある、という考え方をとり、今日では、選択理論・RTは、人間関係の問題に焦点が当てられている。

 

この点をもう少し詳しく言うと、「長期にわたるクライアントの心理的な悩み」の背後には、「クライアントが、大切な人と人間関係がうまくいっていないこと」が原因としてあるということ、さらに、人間関係がうまくいかない原因は、「当事者の一方が、他方に対して、強い外的コントロールを行っていること、または、双方が強い外的コントロールをしあっていること」、そのために双方の基本的欲求が大きく阻害されていること、さらに、クライアントが心理的な悩みを克服するためには、クライアントにとって大切な人との人間関係を再構築することが必要であること、などが主張されている。

 

そして、私たちが他者と良好な人間関係を築くためには、「人間関係を悪くする外的コントロールの行為をやめること」と、「人間関係を良好にする行為をすること」が必要であるとされる。

 

以上のように概観してみると、選択理論にもとづくカウンセリングは、大きく分けて、

 

1)クライアントの願望(上質世界)の達成に向けての、クライアントによる行動の内的コントロールを支援するカウンセリング(WDEPモデルに沿うことで、自然にこれができる)

 

2)クライアントの人間関係の改善や構築を支援するカウンセリング(人間関係における外的コントロールの排除を重視する)

 

の二つのタイプに分けられる、と考えるとすっきりと理解しやすいのではないだろうか。

 

選択理論が構築された当初は、1)のタイプのカウンセリングが中心であったが、現在では、2)のタイプのカウンセリングがより重視されているようである。

 

一方、私たちが個人として、選択理論・RTを生活や人生の上で活用していく際には、1)の「本人のセルフコントロール」を支援するカウンセリングが、個人に降りかかるどのような問題にも対応できる幅の広さを持っており、使い勝手がよい。

 

また、人間関係が問題となっている場合には、2)の「人間関係における外的コントロールの排除」を重視したセルフコントロールが、より効果的であろう。

 

もっとも、1)のタイプにおいて、クライアントの願望が、人間関係の改善や構築を目指す内容のものであれば、それは、2)のタイプのカウンセリングと重なることになる。

 

また、2)のタイプのカウンセリングでは、クライアントの感情や生理反応の悩みの多くは、クライアントの身近にいる大切な人との人間関係がうまくいっていないことが原因であると考える。

 

また、「なぜ、人間関係がうまくいかないのか」という点に関して、「相手が自分に対して強い外的コントロールをしているため、自分の欲求が大きく阻害されている」、あるいは逆に、「自分が相手に対して強い外的コントロールを行っている為、相手が自分との人間関係を遠ざけようとしている」、もしくは、「お互いに、強い外的コントロールをしあっているため、人間関係が悪くなっている」ということがあげられる。そして、欲求が大きく阻害されていることにより、感情や生理反応の悩みを生じていると考える。

 

そのため、相手に対して、強い外的コントロールの行動をすべきではない、あるいは、相手からの外的コントロールにいかに対処するか、ということがテーマになると言えよう。

 

このほか、クライアントの感情的な悩みや生理反応の悩みの原因が、クライアントが過去や周りの環境に外的コントロールされていること、が原因である場合もある。

 

従って、2)のタイプのカウンセリングにおいては、外的コントロールが大きなテーマとなり、これとともに、状況を改善していくにあたっては、自他の外的コントロールに対するクライアント自身による行動のセルフコントロールが中心的なテーマとなる。

 

以上のように、選択理論に基づくカウンセリングには、上の1)、2)の二つのタイプがあると考えられる。

 

とはいえ、実際にカウンセリングを行う際には、1)、2)のいずれのタイプのカウンセリングについても、WDEPモデルの枠組みのもとで、「本人による内的コントロールの重視」と「人間関係における外的コントロールの排除」を念頭に置いて行えば、両方のカウンセリングをすることができよう。

 

さらにいくつか補足するとすれば、

 

・クライアントがコントロールできないところではなく、コントロールできるところを明確にして、それに焦点を当てて、クライアントが欲求を充足できる場面(個人の生活、家庭、職場、第3の居場所、等)、部分を拡大していく手伝いをする、

 

・クライアントが誰かとの人間関係に問題を抱えている場合、心理的な問題を抱えている場合には、なんらかの「強い外的コントロールによる人間関係の悪化」が背後にあるのではないかと考えてみることが重要であろう。

 

そして、その場合には、「相手がクライアントにしている外的コントロールの状況」あるいは、「クライアントが相手にしている外的コントロールの状況」が明確になるような質問をしていくことが役に立つだろう。