ネガティブなフィードバックはしてはいけないのか

選択理論・RTの学習において、相手に対する評価やフィードバックを行う場合、否定的な評価やフィードバックしてはならず、肯定的な評価やフィードバックをするようにと指導されることがある。

 

これは、評価やフィードバックの形をとった外的コントロールを排除し、人間関係の悪化を招かないため、また、否定的な評価やフィードバックは、相手の欲求を阻害する為、相手に、きっちりとキャッチしてもらえない、という趣旨からのものであると思われる。

 

実際、選択理論・RT以外のカウンセリングの勉強会で、ロールプレーをしたカウンセラー役に対して、クライアント役やオブザーバーから手厳しい評価を容赦なく浴びせたりする場面に出会うことがある。

 

そばで見ていても、カウンセラー役の人がいたたまれない様子になったりする。また、ネガティブな評価をされた人は、別の人がカウンセラー役をしたときに、借りを返すように、手厳しい評価をすることもある。

 

そのような経験をすると、選択理論の勉強会において、ネガティブなフィードバックや評価に対して、警戒することもよくわかる。

 

しかしながら、私たちが、否定的なことを肯定的なことに言い換える場合に、本当に伝えたいことのニュアンスが変わる場合も出てくるように思う。

 

また、評価やフィードバックを受ける本人が「すべては単なる情報に過ぎない」という考え方をし、内的コントロールできる人であれば、他者からのフィードバックに対して、低い知覚でとらえて、自分に役立つものだけを取捨選択するであろう。

 

正直な評価やフィードバックが、ネガティブなものを含んでいたり、相手に変わってほしいという気持ちの強いものであったとしても、人間関係を悪化させるほどのものでなければ、受けた側は、評価やフィードバックの内容と、評価やフィードバックした人の真意をあれこれ考えることで、いろいろな気づきを得ることができる可能性もある。

 

「良薬は口に苦し」ということわざがあるが、評価やフィードバックを行う人は、相手のことを真剣に思うからこそ、正直に伝えなければと思って言うのであり、双方に信頼関係があるなら、言われた相手も、自分のことを本当に考えてくれているのだろう、と思うだろう。

 

まして、評価やフィードバックを受ける相手が、「あなたの正直な評価やフィードバックをお願いします」と望むのであれば、ありのままに、思ったことを、良い点も、悪い点も、フィードバックすればいいのではないかと考える。

 

このように考えれば、否定的なことも、肯定的なこともふくめて、自分の正直なフィードバックを行うことで、受ける側は、立体的な評価やフィードバック、たくさんの参考情報を得ることができよう。

 

もう一つ考えられるのは、選択理論・RTでは、自分自身による自己評価を重視し、自分の内的動機づけは、自己評価による願望と現状とのギャップに自ら気づくことで行われることから、相手に対して評価やフィードバックをするよりも、本人の自己評価を促す質問をして、本人から自己評価を引き出すことが重要なのであり、そのような自己評価を促す質問の仕方に上達する練習をするべきなのだ、という考え方もあるだろう。

 

本人が潜在的に自覚していることを、自己評価の質問を行うことによって言語化を促すということである。

 

たしかに、勉強会などにおいて、自己評価の質問の練習をするという意味では、このことも大切だと思うが、「質問で本人の気づき(自己評価)を促す」ということと、本人が他者の評価やフィードバックを手に入れることは、全く別のことであり、どちらも本人にとっては、なくてはならない大事なことであるように思う。

 

評価を受ける側としては、参考情報として自分の外側からいろいろな情報を得ることが、自分を客観視することに役立つのであり、自分にとって耳の痛い情報、不利な情報ほど、大事な情報であることも多い。

 

それを、「肯定的な評価やフィードバックに限る」とすると、自分に入ってくる情報を偏ったものにすることにつながるのではないかと考える。

 

自分で気づいたことでも、他人が同じことを言えば、納得感が高まったりするし、自分の思ったことと正反対のコメントをもらうことも役立つ。

 

以上のように、確かに、「自己評価の質問によって本人による自己評価の気づきを促す」ということは重要であるが、かといって、他者の評価、フィードバックを肯定的なものに限ることは、かえって、本人にとっては、重要な情報を手に入れられないリスクがあるようにも思われる。

 

したがって、あまり、「ネガティブな評価やフィードバックをしてはいけない」ということを強調する必要はないのではないかと考える。行き過ぎがあった際に、注意を促せばよいのであり、「3つほめて、1つ叱る」という程度で構わないのではないだろうか。

 

一方、確かに、否定的なフィードバックばかりでは、受ける側は力の欲求を充たされず、伝える内容や伝え方、伝える順序などについては、相手が受け入れやすいように、相手の誤解がないようにするなどの工夫が必要なことは当然である。

 

評価やフィードバックを行うときには、決めつけるのではなく、受け手の感想も聞く、また、他の人の評価やフィードバックも聞いてみるように進める、などが考えられる。

 

また、相手が、正直な評価やフィードバックを望まないのであれば、そのようにすればよいと考える。